低価格の海外メーカー vs 信頼性の国内メーカー
(2012年12月6日)
「PVジャパン2012」が、千葉市の幕張メッセで開催されました(2012年12月5日~7日)。「PVジャパン」は、太陽光発電(PV)の国内最大級の展示会。今年は、8カ国・地域から196社の出店です。低価格で攻勢をかける海外メーカーと、信頼性ときめ細かな品ぞろえで迎え撃つ国内メーカーの姿勢が印象的です。
太陽電池の輸入が急増
太陽光発電協会の統計によれば、今年度7-9月期の太陽電池出荷量は、国産品が42万4,286kw、輸入品が20万2,686kw。前年度同期と比較すると、全体では1.8倍伸びています。そのうち、国内生産が1.5倍の伸びであるのに対して、輸入は3.1倍の伸びとなっています。輸入品の出荷量全体に占める割合は、前年度が20%弱だったのが、現在では30%を超えています。
四半期ごとの国内における太陽電池出荷量の推移(国産・輸入別)
2011年度 |
2012年度 |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|
4-6月期 |
7-9月期 |
10-12月期 |
1-3月期 |
4-6月期 |
7-9月期 |
|
国産品 |
218,405 |
281,623 |
309,705 |
291,949 |
313,337 |
424,286 |
輸入品 |
40,204 |
66,084 |
96,623 |
99,556 |
131,952 |
202,686 |
合計 |
258,609 |
347,707 |
406,328 |
391,505 |
445,289 |
626,972 |
(単位:kw 太陽光発電協会の統計資料より作成)
太陽電池出荷量の前年同期比較(国産・輸入別)
2011年7-9月期 |
2012年7-9月期 |
伸び |
|
---|---|---|---|
国産品 |
281,623 |
424,286 |
1.5倍 |
輸入品 |
66,084 |
202686 |
3.1倍 |
(単位:kw 太陽光発電協会の統計資料より作成)
サンテックパワー(本社:中国)
サンテックパワーの太陽電池の年間出荷量は2.1GW(ギガワット)で世界1位。2010年、2011年と2年連続で世界№1となっています。さらに、2012年の日本国内における同社の出荷量は、前年比で2倍に増える見込みです。また、同社の日本国内市場でのシェアは、従来6~7%でしたが、来年(2013年)3月には10%程度になる見通しです。価格は、日本国内メーカー製品よりも3割ほど安いようです。
カナディアンソーラー(本社:カナダ)
カナディアンソーラーの日本国内における2012年度の販売量は、前年度の4倍にあたる100メガワットに拡大する見込みです。同社の太陽電池出荷量は、世界3位の年間2.05GW(ギガワット)。価格は、日本国内メーカー製品よりも2割ほど安いようです。
年間出荷量が2GW(ギガワット)というのは、どれくらいの生産量かというと、昨年度の日本国内での太陽電池出荷量が1.4ギガワットですから、日本全体の需要を1社でまかなえるほどのものですね。これが世界トップクラスの「ギガワット・メーカー」なのです。
ちなみに、ソーラーフロンティアが、昨年(2011年)宮崎県に世界最大級のCIS太陽電池工場を稼働させています。生産能力は、単一工場としては世界一。この工場では年間1ギガワットの大量生産が可能です。
海外メーカーと国内メーカーのすみ分けが進みつつある
海外メーカーの動向
海外メーカーの太陽電池が伸びているのは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)向けの出荷が好調なためです。サンテックパワーは、今年度(2012年度)には、メガソーラー(太陽光発電所)向けで、国内シェア15~20%を占める見通しです。また、家庭用太陽光発電でも、半分程度は今も国内メーカーにこだわりがあるものの、コスト重視で海外メーカーを選ぶ人も増えています。
国内メーカーの動向
一方、国内シェア上位のシャープ、京セラ、三菱電機などは、台形タイプや小型の太陽電池といった、様々なタイプの太陽電池を前面に出しています。パナソニックも来年(2013年)1月から、ハーフサイズのHIT太陽電池を投入します。日本の住宅の屋根は複雑な形のものが多いので、それにあったように隙間なく敷き詰めることで、より多くの発電量を得られるからです。単一製品を大量生産してコストを下げる海外メーカーには、こうしたきめ細かな品ぞろえはまねできません。
企業などが設置する大規模太陽光発電所(メガソーラー)が急増しているものの、日本で設置される太陽光発電の7割以上は住宅用です。また、工場の屋根など1メガワット未満の中小型の太陽光発電も、屋根の形状や材質に合わせた細かい設計を必要とするので、価格競争に巻き込まれにくい特徴があるようです。
2012年7-9月期の国内太陽電池出荷量(用途別)
住宅用 |
非住宅用 |
発電事業用 |
電力応用 |
民生用 |
総出荷量 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
出荷量 |
446,360 |
108,690 |
71,240 |
584 |
98 |
626,972 |
構成比 |
71,19 |
17.34 |
11.36 |
0.09 |
0.02 |
100.00 |
(出荷量:kw、構成比:% 太陽光発電協会の統計資料より作成)
このように、
- 国内メーカー ⇒ 「信頼性」と「きめ細かい品ぞろえ」で住宅用や中小型の太陽光発電
- 海外メーカー ⇒ 低価格を売りに、メガソーラー(大規模太陽光発電所)
といったすみ分けが進みつつあります。