太陽電池の種類と比較
(2012年4月23日)
現在、市販されている太陽電池には次のようなものがあります。
タイプ | 長所 | 短所 | 採用 メーカー |
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シリコン系 | 単結晶 |
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多結晶 |
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シャープ | |
HIT |
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化合物系 | CIS |
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ソーラーフロンティア |
シリコン系太陽電池の特徴
太陽電池の原材料の主流はシリコンです。シリコンというのは半導体です。半導体には、条件次第で電気を通す性質があります。例えば「光を当てる」ことが一つの条件となります。太陽電池にシリコンが使われるのは、この特性があるからです。
結晶シリコン太陽電池
結晶シリコンを使った太陽電池には、単結晶タイプと多結晶タイプのの2種類あります。
単結晶シリコン太陽電池
単結晶シリコン太陽電池は、実用化されている太陽電池の中で、最も性能の高い太陽電池です。モジュール変換効率は高いもので20%前後あり、東芝の単結晶シリコン太陽電池は、モジュール変換効率が20.1%で世界最高です。
単結晶シリコン太陽電池は、1つのセルが1つのシリコン結晶でできています。そのため、性能が高いのですが、その分、価格は高めです。
多結晶シリコン太陽電池
多結晶シリコン太陽電池は、単結晶シリコンに比べ量産が可能です。そのため価格は、単結晶シリコン太陽電池に比べ低く抑えられます。
1つのセルの中にシリコン結晶が複数入っていることから多結晶と呼ばれます。単結晶シリコンより変換効率が低いのですが、その理由は、この構造にあります。セル内を電子が移動する際に、結晶と結晶の境目でつかまるからです。
薄膜シリコン太陽電池
薄膜シリコン太陽電池は、シリコン使用量を極限まで少なくした太陽電池です。基盤をフィルムにするとフレキシブルな太陽電池にもできます。
高温時でも変換効率が低下しにくいという特性があります。また、大面積の大量生産が可能です。
結晶シリコン内部ではシリコン原子が規則正しく並んでいるのに対して、薄膜シリコンの内部は、原子の配列が不規則です。そのため電子の流れが妨げられ、モジュール変換効率は6~10%程度にとどまります。
このような原子の配列が不規則な密集した状態を「アモルファス」といい、そのことから薄膜シリコン太陽電池は、アモルファス太陽電池とも呼ばれます。
HIT太陽電池
HIT(Heterojunctio with Intrinsic Thin-layer)太陽電池は、単結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層したシリコン系太陽電池です。単結晶シリコン太陽電池は、高温になると変換効率が低下する特性がありますが、それをアモルファスシリコンによってカバーします。
それによって、高温時でも出力や発電量が低下することなく、実用的に性能の高い太陽光発電です。
国内メーカーではパナソニックがHIT太陽電池を採用しており、業界トップクラスの変換効率(19.5%)を誇ります。
化合物系太陽電池の特徴
シリコン以外の物質を組み合わせてできる太陽電池を化合物系太陽電池と呼びます。
市販品に限定しなければ、世界で最高水準の変換効率をもつ太陽電池は、化合物系の太陽電池なのです。元素の組み合わせで高い変換効率を生み出すことが可能です。ただし、実用化されている化合物系太陽電池の変換効率は、それほど高くありません。アモルファスシリコン太陽電池を同程度です。
化合物系太陽電池は、シリコンを使用しないため安価で、「シリコンの供給量問題」の影響を受けないのが大きなメリットです。
日本では2011年にCIS太陽電池の本格的な量産が開始されました。
シリコンは砂や岩石に含まれ、地球の地殻の約28%を占めるといわれます。身近な泥の中にも含まれている物質にもかかわらず、世界的にシリコンが不足しています。
理由は、太陽電池の原材料に使用されるシリコンは99.9999%以上の純度が求められるからです。
自然界では二酸化ケイ素の形で存在するため、不純物を取り除き、高純度のシリコンを取り出さなければいけません。その生産が、世界的なシリコンの需要に追い付かないのです。
<参考文献>
- ニュートン『最新ガイド 太陽光発電』(2011年8月)
- 『トコトンやさしい太陽電池の本』(産業技術総合研究所太陽光発電研究センター)