太陽光発電と税金 Q&A
給与所得者が、売電収入を含めて給与所得以外の所得の合計が20万円を超える場合、確定申告が必要となります。
ただし、売電収入がそのまま所得となるわけではなく、実際に確定申告が必要となるケースは、ほとんどありません。
売電収入による所得は、次のように計算されます。
所得=売電収入-経費
ここで経費は、太陽光発電設備の減価償却費です。
通常、太陽光発電設備の法定耐用年数は17年なので、17年間にわたって減価償却します。つまり、太陽光発電設備を導入して17年間は、売電収入から経費を差し引いた金額が課税所得となります。
また、余剰電力の売電の場合、経費に算入できるのは売電部分に相当する割合だけです。
参考例
具体例で考えてみましょう。
- 出力5kwの太陽光発電設備を180万円で設置したとします。
- 年間発電量が5,000kwh、売電量と自家消費量を7:3とします。
経済産業省によれば、10kW未満の住宅用太陽光発電の平均価格は2015年10-12月期37.1万円/kW、平均出力は4.7kW、余剰売電比率の平均値は69%となっています。
※調達価格等算定委員会「平成28年度調達価格及び調達期間に関する意見」(平成28年2月22日)より
年間発電量は、設置容量1kWあたり1,000kWhとしています(太陽光発電協会の数値を参考)。設置する地域や太陽光パネルの方位・傾斜角度・性能により異なります。
この場合の売電収入による課税所得の計算は、次のようになります。
所得=売電収入-経費
売電収入
売電収入=売電量×余剰売電比率×買取単価
2016年度の買取単価は、出力制御対応機器なしの場合が31円/kWh、出力制御対応機器ありの場合が33円/kWhですから、売電収入は、それぞれ次のようになります。
- 出力制御対応機器なしの場合:5,000kWh×0.7×31円/kWh=108,500円
- 出力制御対応機器ありの場合:5,000kWh×0.7×33円/kWh=115,500円
経費(減価償却費)
経費=取得価額×償却率×余剰売電比率
経費は減価償却費です。減価償却費は、財務省令(減価償却資産の耐用年数等に関する省令)で法定耐用年数ごとに定められている償却率を用いて求めます。定額法と定率法がありますが、ここでは定額法を用います。
サラリーマンの方にとって減価償却というのは馴染がないかもしれませんが、定額法は、減価償却資産(太陽光発電設備)の取得価額に償却率を乗じて求めた金額を各事業年度の償却限度額とする方法です。
イメージとしては、設備取得費を法定耐用年数で割って算出した金額を1年間の経費とできるというものです。法定耐用年数の間は経費として落とすことが認められます。
通常、太陽光発電設備の法定耐用年数は17年です。耐用年数17年の減価償却資産の定額法による償却率は0.059(=1/17)です。
なお、取得費全額が経費として認められるわけではありません。全発電量のうち、売却した電力量の占める割合を経費に算入できます。
つまり、経費(減価償却費)は次のようになります。
- 180万円×0.059×0.7=74,340円
課税所得
よって、課税対象となる所得は次のようになります。
- 出力制御対応機器なしの場合:108,500円-74,340円=34,160円
- 出力制御対応機器ありの場合;115,500円-74,340円=41,160円
このように、サラリーマンの一般家庭で、売電収入だけで確定申告が必要となるケースは、ほとんどありません。
ただし、他に所得があって、合計で20万円を超える場合は確定申告が必要となりますから注意してください。
減価償却費の計算上、太陽光発電設備は、一般に「機械及び装置」に分類され、耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」別表第二の「55 前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの」のうち「その他の設備」の「主として金属製のもの」に該当し、17年となります。
ただし、自家消費型の太陽光発電設備で、その電気を用いて他の製品を製造する場合などは耐用年数が異なる場合もあります。国税庁のホームページで耐用年数が9年となる例も紹介されています。
よくわからない場合は、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
- 耐用年数が9年となる太陽光発電設備の例
(国税庁のホームページにリンクしています。)
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