接続義務は変わらない?
(2016年6月8日)
現行FIT法(再エネ特措法)では、第5条で電力会社の接続義務と誘電給電を規定していましたが、改正FIT法では第5条を削除。FIT法から再生エネの接続義務と優先給電の規定が無くなりました。
これについて経済産業省は、FIT法から接続義務規定が削除されても、接続義務はなくならないとしています。
Q3「接続義務」ってなくなるの?
A3 なくなりません。平成28年4月に施行された電気事業法に基づいて、電力会社は再生可能エネルギー発電を含む全ての発電事業者に対して接続義務を負うことになります。
※「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の改正について」(資源エネルギー庁 平成28年6月)
現行FIT法第5条が削除された後も、接続義務については従前より電気事業法に基づき、全電源に対してオープンアクセス義務が定められており、電気事業法及び改正FIT法に基づく省令・運用等で、現在と同内容の措置を対応することとし、FIT電源の円滑な系統接続を確保する。
※「FIT制度制度見直しの詳細制度設計について」(資源エネルギー庁 平成28年6月)
しかし、接続義務の規定がある現行FIT法の下でも、大手電力会社や国の都合により、接続義務や優先給電は骨抜きにされてきました。
九州電力など大手電力5社による「接続保留」を契機に、原発の再稼働を前提とした再生エネの「接続可能量」なるものを作り出し、それを超えそうな場合には、電力会社が一方的に接続を保留したり、出力制御できる仕組みになっています。
【参考】⇒ 固定価格買取制度の運用見直しと発電抑制の新ルール
もともとFIT法は、全量買い取りでしたが、運用変更で全量固定価格買取が骨抜きにされたのです。
電気事業法に「全電源について接続義務を規定しているから問題ない」としていますが、電源間の優先順位はなく、再生エネの優先接続は保証されていません。
法律で「接続義務」や「優先給電」が定められていても平気で骨抜きにするのですから、法律から義務規定が無くなると、ますます再生エネの発電抑制がもたらされる恐れがあるのは明らかではないでしょうか。
現行FIT法第5条の内容と改正後の対応
現行FIT法の第5条の内容と、経済産業省が考えるFIT法改正後の対応を見ておきましょう。
現行FIT法第5条の内容
現行FIT法第5条に規定された主な内容は次の通りです。
第1項
電力会社は、再生エネ発電事業者から接続の請求があったとき、次の場合を除き、接続を拒んではならないことが定められています。
- 発電事業者が接続に必要な費用を支払わない場合
- 電気の円滑な供給の確保に支障が生ずるおそれがあるとき
- 経済産業省令で定める正当な理由があるとき
(契約に虚偽の内容や法令に違反する内容が含まれる場合や出力制御ルールに同意しない場合など)
第2項
接続が円滑に行われない場合における、電力会社に対する経済産業大臣の指導・助言。
第3項
正当な理由なく接続を行わない電力会社に対する経済産業大臣の勧告。
第4項
勧告に従わない電力会社に対する経済産業大臣の措置命令。
FIT法改正後の対応
経済産業省は、「電気事業法及び改正FIT法に基づく省令・運用等で、現在と同内容の措置を対応する」としています。
第2項から第4項は、接続しない電力会社に対する国の指導・勧告・命令に関する規程です。これらは電気事業法第23条2項(禁止行為の停止・変更命令)、電気事業法第27条1項(業務改善命令)で対応する方向です。
第1項の1号・2号については、電気事業法第17条4項(託送供給義務)で対応し、第3号については、電気事業法第17条4項のほか、改正FIT法に関する新しい省令に全て規定する予定としています。
第1項3号については、経済産業省令を変更し、電力会社が再生エネを無制限・無補償で出力抑制できる仕組みを導入するためにも利用されてきました。
今後の省令改正の動向を注視する必要があります。
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