FIT法(再エネ特措法)改正による固定価格買取制度の変更点

MENU
※当サイトでは記事内にアフィリエイト広告を含む場合があります。

2017年4月1日より固定価格買取制度が変わる

(2016年5月26日)

「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(FIT法・再エネ特措法)が、5月25日に改正されました。改正FIT法の施行日は、2017年(平成29年)4月1日です。

 

ここでは、固定価格買取制度の主な変更点と、改正「FIT法」の問題点をご紹介します。

 

 

固定価格買取制度の主な変更点

FIT法改正による固定価格買取制度の主な変更点は次の4つです。具体的な基準や運用などについては、今後、経済産業省令などで決められていきます。

 

新認定制度の創設

発電事業の実施可能性を確認した上で認定する新たな制度を創設します。新制度では、電力会社と接続契約を締結していることが認定要件となります。

 

これは、悪質な「空押さえ」を防ぐためです。高い買取価格で認定を受けながら、太陽光パネルなどの設備価格が値下がりするまで発電を遅らせ、不当に儲けを上げる悪質な事業者を排除するのが狙いです。

 

すでに認定を受けていても、改正FIT法の施行日まで、つまり今年度中(2017年3月31日まで)に電力会社と接続契約ができなければ、認定が失効します。

 

ただし、電力会社との接続契約にかかる時間を考慮し、2016年7月1日以降に認定を受けた場合は、認定から9ヵ月の猶予期間が設けられ、猶予期間内に接続契約を締結すれば失効しません。

 

改善命令や認定取り消しが可能に

事業開始前の審査に加え、事業実施中の保守点検や、事業終了後の設備撤去などの遵守を求め、違反時の改善命令や認定取消を可能とします。

 

また、景観や安全上のトラブルが発生していることから、事業者の認定情報を公表する仕組みを設けます。

 

新たな買取価格の決定方式を導入

事業用の太陽光発電に入札制を導入し、発電コストの安い事業者の参入を優先します。電気料金に上乗せされる買取費用を抑えるのが狙いです。まず、大規模案件(メガソーラー)から実施されます。

 

談合した事業者には、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金に処し、または併科されます。官製談合の場合、国の職員は5年以下の懲役または250万円以下の罰金に処せられます。

 

また、事業の見通しが立てやすくなるよう、数年先の買取価格まであらかじめ示すようになります。地熱・風力・中小水力・バイオマスといった「リードタイムの長い電源」に、発電事業者の参入を促すのが狙いです。

 

電源 価格決定方式
事業用太陽光

毎年決定。
大規模太陽光は入札を実施。

住宅用太陽光 価格低減のスケジュールを示す。
風力

 

リードタイムの長い電源については、複数年分を一括して決定。
(※風力は、価格低減のスケジュールを示す。)

地熱
中小水力
バイオマス

 

入札の対象となる大規模太陽光の規模や、価格低減の具体的なスケジュールなどについては、調達価格等算定委員会で専門家の意見をふまえ決定されます。

 

送配電会社による買い取りへ

再生エネ電気の買取義務者が、小売電気事業者から送配電事業者に変更されます。電力システム改革を活かした再生エネ導入のためです。

 

FIT電気買い取りの流れ

 

改正FIT法の施行日(2017年4月1日)以降、新たに買取契約を締結する場合、FIT電気は送配電事業者が買い取ることとなります。それ以前の買取契約分については、引き続き小売電気事業者の買い取りです。

 

また、送配電事業者が調達したFIT電気は、卸電力取引市場を経由して小売電気事業者に引き渡すことが原則ですが、卸電力取引市場経由以外にも、小売電気事業者への直接引渡しも可能としました。

 

この場合、FIT発電事業者と小売電気事業者との間に個別の契約が締結されていることが条件です。あくまで送配電事業者が買い取った上で、小売電気事業者に供給する流れになります。

 

電力の地産地消の取り組みは、引き続き可能

改正FIT法で送配電事業者による買い取りとなりますが、地域のFIT発電事業者から調達した電気であることを表示して販売することは、引き続き可能です。

 

その際、FIT発電事業者と小売電気事業者の間で個別に契約していることが条件です。そうすれば、例えば「当社は地元の○○発電所が発電した電気を販売しています」と表示して電気を売ることができます。

 

改正FIT法で、買取義務のある「電気事業者」の定義が、「小売電気事業者」「一般送配電事業者」「登録特定送配電事業者」から、「一般送配電事業者」「特定送配電事業者」に変更になっています。

 

改正FIT法(再エネ特措法)の問題点

改正FIT法の問題点として、「接続義務規定の削除」と「入札制の導入」の2つを指摘しておきます。

 

電力会社の接続義務規定を削除

改正FIT法の最大の問題点は、電力会社の接続義務規定が削除されたことです。

 

現行FIT法は第5条で、電力会社に対して再生エネ発電との接続義務を定めています。電力会社は、再生エネ認定発電設備を優先して接続することを法律で義務付けられていました。

 

ところが、改正FIT法では、第5条が全て削除され、再生エネを優先して接続する義務規定がFIT法から消えています。

 

経済産業省は、「電気事業法で、電力会社は再生エネ発電を含む全ての発電事業者に対して接続義務を負うことになっているので、接続義務はなくならない」といいますが、電気事業法では、電源間の優先順位はありません。

 

九州電力などの接続保留(2014年9月)を契機に、電力会社による無制限・無補償の出力制御を容認する仕組みに変わりました。現行FIT法の下でも「接続義務」や「全量買取義務」が骨抜きにされてきたのです。

 

政府は、エネルギーミックスをふまえ、電源間でバランスの取れた導入を進めるとしています。エネルギーミックスは、原発の再稼働を前提としています。また、電力会社が算出した再生エネ接続可能量は、原発再稼働を前提としたものです。これらは、政府や電力会社による「空押さえ」に他なりません。

 

こうしたことから、FIT法から接続義務規定を削除することは、さらなる再生エネ発電の導入抑制がもたらされる恐れがあるのです。むしろ、それが政府の狙いともいえるでしょう。

 

もちろん、将来的にはFIT制度に頼らない再生エネ発電を実現する必要があります。

 

しかし、日本の再生エネ導入は、世界から遅れています。ドイツでは2015年に再生エネが全発電量の30%に達しています。それに対して日本の再生エネは1割程度にすぎません。

 

また、欧米では、2030年の再生エネ電力の目標を40~50%に掲げています。日本は22~24%です。

 

日本における再生エネの潜在的可能性の高さからしても、今は、電力会社による接続拒否を許さず、再生エネを普及させる方向でのFIT制度の改善が必要ではないでしょうか。

 

 FIT法改正後の経済産業省が考える接続義務の対応

 

入札制の問題点

入札制の導入は、大企業に有利です。市民・地域主体の再生エネ発電が落札できず、減少してしまうことが懸念されます。再生エネ発電を普及させるには、市民・地域主体の再生エネ発電設備を増やすことこそ大切です。

 

また、すでに入札方式を導入しているドイツやフランスでは、逆にコストが上昇し、入札制がコスト低減につながるとは一概に言えません。

 

関連

おすすめのページ

FIT法(再エネ特措法)改正による固定価格買取制度の変更点関連ページ

太陽光発電の稼働が遅れると買取価格を減額
経済産業省は2016年6月7日、太陽光発電の固定価格買取制度で、発電開始の期限を設定し、遅延したら買取価格を減額するなどのペナルティーを科す方針を決めました。
改正FIT法では電力会社の接続義務規定を削除
改正FIT法(再エネ特措法は、電力会社の接続義務と優先給電を規定した第5条が削除されました。