原発再稼働を前提とした再生エネ受け入れ可能量算定
(2014年12月17日)
電力会社による再生エネ受け入れ可能量(接続可能量)算定にあたり、経済産業省は原発再稼働を前提とした方法を電力会社に指示しています。
原子力・地熱・一般水力はベースロード電源、火力・揚水式水力は調整電源、風力・太陽光は自然変動電源という位置づけです。
電力会社は、自社所有の発電設備の出力抑制を行ってでも再生エネを優先的に受け入れることが法令で義務付けられています。
ただし、そもそも法令で、原子力発電設備、地熱発電設備、一般水力発電設備(揚水式を除く)は、電力会社みずから行わなければならない出力抑制の対象となっていません。
つまり、原子力発電設備はベースロード電源として、再生エネよりも優先される仕組みになっているのです(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則 第6条1項3号)。
また、原発再稼働が政府の方針であることから、原子力発電設備を含むベースロード電源については「震災前過去30年間の平均利用率」が用いられています。
東日本大震災のときに福島第1原発事故が発生し、原発に依存しない社会が求められ、しかも現在原発が稼働していないにもかかわらず、震災前30年間の原発が稼働していた時期の発電量を盛り込み、再生エネの受け入れ可能量を算出しています。
このように、今回電力会社から示されたものは、原発再稼働を前提とした再生エネ受け入れ可能量なのです。
再生エネ接続可能量算定イメージ図
経済産業省が新エネルギー小委員会・系統ワーキンググループに提出した資料(2014年10月16日)
再生エネ接続可能量算定フロー
再生エネ接続可能量算定にあたって経済産業省が示したフローは次のようなものです。
ステップ① 接続可能量算定の検討断面の決定(評価対象とする時点の決定)
↓
ステップ② 検討断面における需要想定の決定
↓
ステップ③ 検討断面における想定出力の決定(原子力・地熱・一般水力)
↓
ステップ④ 再生エネの導入量に応じた想定出力等の決定
↓
ステップ⑤ 現状制度における需給解析
(火力発電所の抑制、揚水運転、30日間の再生エネ出力抑制の反映等)
↓
接続可能量
接続可能量算定に含まれる原発の供給力の割合
評価供給力 (万kw) |
設備容量 (万kw) |
設備利用率 | 昼間最低負荷 (万kw) |
原子力の割合 | |
---|---|---|---|---|---|
北海道 | 175.5 |
207.0 |
84.8% |
308.4 |
56.9% |
東北 | 234.9 |
389.3 |
69.8% |
790.7 |
29.7% |
北陸 | 121.8 |
170.8 |
71.3% |
252 |
48.3% |
中国 | 201.9 |
265.3 |
76.1% |
554 |
36.4% |
四国 | 168.0 |
202.2 |
83.1% |
264.5 |
63.5% |
九州 | 438.7 |
525.8 |
83.4% |
788 |
55.7% |
(注1)沖縄電力は原子力発電設備はないので、この表には含めていません。
(注2)評価供給力(万kw)=設備容量(万kw)×設備利用率
(注3)右端の数字は、原子力が昼間最低負荷に占める割合。
※ 経済産業省が新エネルギー小委員会・系統ワーキンググループ(2014年12月16日)で示した資料より。
接続可能量算定に含めた電力6社の原子力発電設備
設備 | |
---|---|
北海道 | 泊1(57.9万kw)、泊2(57.9万kw)、泊3(91.2万kw) |
東北 | 東通(57.0万kw)、女川1(52.4万kw)、女川2(82.5万kw)、女川3(42.8万kw)、柏崎刈羽1(52.6万kw)、東海第二(21.1万kw)、大間(28.1万kw) |
北陸 | 志賀1(54万kw)、志賀2(75.8万kw)、原電敦賀1(3.4万kw)、原電敦賀2(37.6万kw) |
中国 | 島根1(46.0万kw)、島根2(82.0万kw)、島根3(137.3万kw) |
四国 | 伊方1(56.6万kw)、伊方2(56.6万kw)、伊方3(89.0万kw) |
九州 | 玄海1(55.9万kw)、玄海2(55.9万kw)、玄海3(118.0万kw)、玄海4(118.0万kw)、川内1(89.0万kw)、川内2(89.0万kw) |
※ 東北電力の福島第二は、接続可能量を算定する供給力には含めていません。
※ 経済産業省が新エネルギー小委員会・系統ワーキンググループ(2014年12月16日)で示した資料より。
原子力発電の電力供給は、出力抑制の対象にもなりませんから、原発の再稼働をキッパリと中止し、諸外国同様に、日本も再生可能エネルギーを軸とするエネルギー政策へ転換すれば、再生可能エネルギーをさらに普及させる余地は十分あります。
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