事業収益の予見可能性を高める
(2015年10月21日)
経済産業省は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)で、数年先の買取価格をあらかじめ決定する方式を導入する検討に入りました。
10月20日の総合資源エネルギー調査会・再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会に、経済産業省が提案しました。
数年先の買取価格をあらかじめ決定する方式導入のねらい
太陽光以外の地熱・風力・中小水力・バイオマスの導入拡大を促すのがねらいです。
背景には、FIT制度導入以降、太陽光発電は大きく伸びましたが、それ以外の再生エネの伸びは低調なことがあります。
再生エネ発電設備導入量(2012年7月~2015年6月末)
- FIT制度導入後の再生エネ発電設備導入量(運転を開始したもの)
- 単位:万kW
- 経済産業省の資料より作成
リードタイムの長い電源は投資リスクが大きい
風力・地熱・水力のようなリードタイムの長い電源は、事業化決定後も、適用される買取価格が決定していないリスクを負いながら、環境アセスメントや地元調整など事業の具体化を進めざるをえないのが現状です。
買取価格が決まるのが、FIT認定時とすれば、地熱・風力は、事業化決定して約3~4後、中小水力も事業化決定して約3年後に、買取価格が決まることになります。
地熱
地熱は、地表調査や探査などを行い、事業化決定するのに約5年。そこから環境アセスなどを実施し、最終的に出力規模や発電機の仕様が確定するまでに3~4年かかるとされています。
環境アセスが終了し、発電容量などの詳細が最終的に確定するのは、事業化の検討開始から9年後です。その段階でFIT認定を取得して、買取価格が決定します。
環境アセスを行う3~4年間は、買取価格変動リスクを抱えながら、事業の具体化を図ることになります。
風力
風力は、風況調査などを行い、事業化決定するのに2年。そして環境アセスや地元調整などに3~4年かかり、出力規模が最終確定します。この段階で電力会社と接続契約を結び、FIT認定を取得して、買取価格が決まります。事業化の検討開始から5~6年後です。
環境アセスを行う3~4年の間は、買取価格変動リスクを抱えながら、事業の具体化を図ることになります。
中小水力
中小水力は、流量調査など行い事業化を判断するのに5年。事業化決定後、用地・水利使用など地元との調整を経て、発電機の詳細設計に3年かかります。この段階でFIT認定を取得して、買取価格が決まります。事業化の検討開始から8年後です。
事業化決定後の3年間は、買取価格変動リスクを抱えながら、事業の具体化を図ることになります。
バイオマス
バイオマスは、事業化決定からFIT認定まで1年間と比較的短いのですが、他のFIT電源と異なり、燃料調達の検討が事業実施の前提となります。今後、燃料の需給状況によって1年間以上かかるリスクがあり、安定的な燃料調達体制構築などのため、より精緻な検討が必要となります。
一覧でまとめると次の通りです。
電源 | 開発期間 | 事業化判断 | 買取価格決定時期 |
---|---|---|---|
地熱 | 13年 |
5年目 |
9年目 |
風力 | 8年 |
2年目 |
5~6年目 |
中小 水力 |
13年 |
5年目 |
8年目 |
バイオマス | 5年 |
1年目 |
2年目 |
- それぞれ、事業化検討開始からの期間。
- 再生可能エネルギー導入促進関連制度改革小委員会の資料より
数年先の買取価格をあらかじめ決めるメリット
数年先の買取価格をあらかじめ決めておくことで、事業収益の予見可能性が高まることが期待されます。
現行制度では、毎年、翌年度の買取価格を決定していますが、数年先の買取価格を決定することで、リードタイムの長い電源も、事業化決定のリスクが軽減されることとなり、開発促進につながるとみられています。
一方、太陽光については、数年先の買取価格を決定することで、「買取価格の引き下げの予見可能性が向上し、コスト低減への努力が促される」とされています。
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