有機薄膜太陽電池の特徴
【ポイント】
- 塗るだけで発電できる。
- 最も簡単に作れる太陽電池。
- 最も薄い太陽電池。
有機薄膜太陽電池は、プラスチックの原材料に使われる有機物が使われます。シリコンのような高価な材料を使わないので、コストを大幅に引き下げることが可能です。
プラスチックの原材料となる有機物は、電気を通す性質がなかったので、従来は絶縁体として知られていました。ところが有機分子に特有なπ電子をうまく利用することで、有機物にも導電性を持たせることができることが発見されました。
電気を通すことができるようになった有機物を、これまでの無機物に代わる半導体として使うという試みが、いろいろと研究されているようです。
現在は研究・開発段階なので、実用化されるのはまだ先になりそうです。
有機薄膜太陽電池の原理
有機薄膜太陽電池の原理は、「電子を受け取りやすい分子」と「電子を放出しやすい分子」を混ぜて薄膜を作り、それに光を当てることで発電させるというものです。
製造工程は次のような流れです。
- 2種類の有機半導体(p型・n型)を混ぜて溶かします。
- その溶液を電極がついた基盤に塗って乾かして薄膜にします。
- 電極を有機薄膜上に形成します。
このような非常に簡単な方法で太陽電池つくることができるのです。
そのため、印刷機で太陽電池を製造できるといわれています。透明で薄いプラスチック電極など基盤となる材料が紙の代わりで、太陽電池の材料となる有機物を溶かした材料がインクの代わりというわけです。こうして印刷機を使って短時間で大量の太陽電池を製造することが可能とされています。
しかも、使用する有機物を変えることで、色合いも調節できます。つまり、まるでポスターを印刷するように太陽電池を作ることができるというわけです。
将来的には、ポスターを貼るのと同じように太陽電池を壁や柱に貼って、簡単に発電できるようになるかもしれないといわれています。
価格破壊を引き起こす次世代太陽電池
製造コストも大幅に安くなる可能性があります。例えば、アモルファスシリコン太陽電池の製造設備と比べても、有機薄膜太陽電池の製造設備は、20分の1程度になる可能性が高いとされています。
このことは、有機薄膜太陽電池が、非常に低価格で市場に出る可能性を示しています。太陽電池の価格破壊が起きることは間違いありません。
現在の変換効率は、実験室でのモジュール変換効率で7~9%。今後、実用品としての変換効率で10%、さらには13%にまで高めるため、現在、研究・開発が取り組まれています。
<参考文献>
- 『トコトンやさしい太陽電池の本』(産業技術総合研究所太陽光発電研究センター)
- ニュートン『最新ガイド 太陽光発電』(2011年8月)
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