色素増感太陽電池の特徴
【ポイント】
- 光合成に似た発電メカニズム。
- 低コスト化の可能性。
- インテリアにも使えるカラフルな太陽電池。
インテリアにも使えるカラフルな太陽電池
太陽電池といえば濃紺色が普通ですが、赤、青、黄、緑、紫、黒…といったようにカラフルな太陽電池が色素増感太陽電池です。
実験での小面積のセル変換効率で12%を記録し、モジュール変換効率でも約10%の性能が出ています。
色素増感太陽電池は、室内光のような弱い光でも発電できるという特徴があります。
近い将来、携帯やノートパソコンなど、デザイン性が求められ、それほど電力を必要としないものに色素増感太陽電池が導入され、さらに屋根置きや住宅の外装材としてデザインされたものも出てくるとみられています。
色素増感太陽電池の構造と発電メカニズム
色素増感太陽電池は、「薄膜電極」「色素」「電解液」「対向電極」から構成されます。
発電メカニズムはこうです。酸化チタンの表面に吸着した色素が、可視光などの光を吸収し、励起した電子が酸化チタンの方へ移動します。酸化チタン自身は可視光を吸収しません。色素が代わりに可視光を吸収するので、色素増感といわれます。電子を失った色素は、ヨウ素イオンから電子を受け取り再生します。
色素が光を吸収し電子を発生することから、光合成型太陽電池ともいわれます。
有機色素の種類を選ぶことで、赤、青、黄、緑、紫などのカラフルな太陽電池を作ることができます。
ハイビスカス、ブルーベリー、シソの葉など植物から抽出した色素を使って発電することもできるし、緑色のクロロフィル化合物を使えば、緑色の太陽電池、つまり人工の「葉っぱ」を作ることも可能なわけです。発電する造花ができるのです。なんとも楽しい話ですね。
色素増感型は結晶シリコン系に比べて大幅に製造コストを抑えられる可能性もあります。
耐久性に弱点
アモルファスシリコン太陽電池などと同等の性能を持ちながら商品化されていないのは、耐久性に弱点があるからです。電解液に蒸発しやすい液体(有機溶媒)を使うからです。
現在、耐久性を上げるために、電解質をゲル状にする研究が行われています。
また、蓄電可能な色素増感太陽電池の研究もおこなわれています。電解液の中に、蓄電機能のある電極を入れることで、発電した電力の一部を電極に蓄電しようというものです。
<参考文献>
- 『トコトンやさしい太陽電池の本』(産業技術総合研究所太陽光発電研究センター)
- ニュートン『最新ガイド 太陽光発電』(2011年8月)
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