ベースロード電源6割に隠された二重の罠

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石炭火力発電所の建設ラッシュ

(2015年4月22日)

2016年4月の電力小売り全面自由化に向け、石炭火力発電所の猛烈な建設ラッシュが起きています。先日も、関西電力が東電ゼネラル石油と共同で、千葉県に出力100万kw級の石炭火力発電所を建設する計画であることが報道されました(日経4月12日)。出力100万kw級というのは、原発1基分に相当します。

 

東京電力と関西電力は、これまで互いにそれぞれの市場で電力を販売(越境販売)したことはあったものの、大型発電所を建設したことはなく、今回の計画が初めてです。電力小売り全面自由化を見据えた競争が、新たな局面に入ったと注目されました。

 

福島第1原発事故以降、石炭火力発電所の建設計画が急速に進んでいます。環境NGO気候ネットワークが、その全体像を把握するため調査を行っています。

 

昨年(2014年)10月23日の気候ネットワークの発表によると、建設が計画されている石炭火力発電所は、少なくとも25基あり、計1,364万kwに上るとされていました。

 

それが今年4月9日に発表された調査結果によれば、新規計画は43基、設備容量2,120万kwに上ることが明らかになりました。半年足らずで1.7倍、約2倍近く増加しています。

 

調査年月日 新規計画数 発電容量

2014年10月23日

25基

1,364万kw

2015年4月9日

43基

2,120万kw

※ 環境NGO気候ネットワーク調べ

 

気候ネットワークは、これらの発電所が全て建設され、稼働すれば、約1億2,700万トンに上るCO2が排出されると推計しています。京都議定書の基準年である1990年の日本全体の排出量(12億6,000万トン)の10%に相当する量です。つまり、CO2が1990年比で10%増加することになります。

 

石炭火力発電は、最新型のものでもCO2排出量は、天然ガス発電の約2倍といわれています。次々と持ち上がる石炭火力発電所建設計画に、環境団体が危機感を強めるのも当然です。

石炭火力発電所が増える理由

温室効果ガスの削減が世界的な課題なのに、どうして日本では石炭火力発電所の建設計画が急増しているのか、その理由は「ベースロード電源」にあります。

 

安倍政権のエネルギー基本計画が昨年4月11日に閣議決定されました。その中で、石炭火力発電が原発と共にベースロード電源と位置付けられました。これが、石炭火力発電が急増している背景にあります。

 

エネルギー基本計画では、電源構成については定めていませんでした。現在、検討作業が進行中で、今月末には有識者委員会で取りまとめを行い、5月には2030年の電源構成比率を決定する方向です。

 

そんななか注目すべきが、政権与党である自民党の電源構成に関する考えです。

 

自民党が今月7日に安倍首相に提出した「エネルギーミックスに関する提言」では、「欧米の多くの国で、漸減傾向にあるが現状6割以上となっているベースロード電源について、我が国において国際的に遜色のない水準を確保すること」と求めました。

 

なんとも回りくどい表現です。もともとの原案ではベースロード電源6割確保とされていたようですが、世界的にはベースロード電源が減少していること、また原発再稼働に慎重な意見に配慮して、このような分かりにくい表現となったようです。

 

ベースロード電源6割の二重の罠

この「ベースロード電源6割」には「二重の罠」があると、自民党の国会議員が語っています。

 

提言で、ベースロード電源について明確に6割という数字を入れたことで、原発2割以上を求める財界の要求に応えています。原発比率を明示してはいませんが、ベースロード電源を6割とすることで、おのずと原発2割となる仕組みです。これが「ベースロード電源6割」の1つ目の罠です。この点は、一般に指摘されていることです。

 

実は、「ベースロード電源6割」には、もう1つの罠があるのです。このことは「しんぶん赤旗」(2015年4月21日)が暴露しています。

 

自民党のある国会議員が語った言葉が載っています。次のような内容です。

 

提言は、原発の再稼働を進めるというメッセージとともに、石炭を殺さないというメッセージでもある。

 

自民党内には原発を20〜25%にしたいと思っている人間もいるが、現実的には難しい。そのときにベースロード電源を6割としておけば、石炭を増やすことになる。二重の罠だ。

 

地球温暖化対策が、待ったなしの人類史的課題となっているなかで、欧米では石炭火力発電は原則禁止の方向に踏み出しているのに、日本は、世界の流れに逆らって石炭火力発電を使い続けるというのが、自民党「提言」のメッセージとなっているというのです。

 

危険な原発を再稼働させる、再稼働だけでは足らず原発の大型化も含めリプレース(建て替え)もする、さらに温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電を増強する、これが安倍自民党政権のエネルギー政策なのです。

 

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