住宅用太陽光発電の国の補助金が2013年度末で終了
(2013年12月15日)
経済産業省は11月5日、住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金を今年度いっぱいで終了することを発表しました。来年度からは、補助金制度そのものがなくなる方向です。なお、今年度中であっても、予算に達すれば受付は終了です。
国の補助金を活用して住宅用太陽光発電システムを導入しようと検討されている方は、急いだ方がよさそうです。
経済産業省は、「住宅用太陽光発電システムの価格低下を促しつつ市場拡大を図るため、…住宅用太陽光発電導入支援補助金の補助金申込書の受付は、平成26年3月31日(当日消印有効)を以て終了となります」としています。
補助金創設の所期の目的とされた「住宅用太陽光発電システムの価格低下と市場拡大」を図ることができたので、補助金を終了するということのようですが、果たして所期の目的は達成されたのでしょうか?
住宅用太陽光発電の補助金の経緯
この補助金は、住宅用太陽光発電システムの導入を促進し、市場の拡大と技術革新とをあわせてシステム価格の低下を実現し、将来の大量導入を可能とすることを目的として、2009年1月から始まりました。
2008年度(平成20年度)補正予算(2009年1月)で創設され(補正予算90億円)、当初は7万円/kwでした。この補助金単価は2010年度(平成22年度)まで続き、2011年度(平成23年度)には4.8万円/kwと下がりました。
2012年度(平成24年度)には、システム価格に応じて補助単価を2種類に分け、3.5万円/kwと3万円/kwに引き下げました。2013年度は(平成25年度)は、さらに2万円/kwと1.5万円/kwに引き下げられました。
現行の住宅用太陽光発電補助金以前にも、同様の補助金がありました。量産化等によるコスト低減を目指して、1994年度(平成6年度)から2005年度(平成17年度)までの12年間、住宅用太陽光発電システムの設置費用の一部を助成するものでした。
その結果、住宅用太陽光発電のシステム価格は、需要の拡大と技術開発の成果により、助成開始前年度の1993年(平成5年)当初は、平均一軒当たり3.5kwで、その導入費用は約1,300万円でしたが、2005年度(平成17年度)には、約6分の1の230万円まで低下しました。
このように、システム価格の大幅な低下、また、住宅向け太陽光発電の導入量が助成開始前の1993年度に比べ約60倍にも増加したことなどから、同補助金は所期の目的を達成したものとして、2005年度(平成17年度)で終了しました。
その後、2009年1月に、新しい補助金として現行制度ができたのです。
住宅用太陽光発電の補助金が創設された背景
住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金が2009年に創設された背景には、2008年7月29日に閣議決定された「低炭素社会づくり行動計画について」の中で、数値目標を盛り込んだことがあります。
太陽光発電について、次のような目標を掲げました。
- 太陽光発電の導入量を2020年に10倍、2030年には40倍にすることを目標として、導入量の大幅拡大を進める。
- 価格については、3~5年後に太陽光発電システムの価格を現在の半額程度に低減することを目指す。
(「低炭素社会づくり行動計画について」(2008年7月29日)より抜粋)
補助金を終了して「行動計画」の目標達成の見込みはあるのか
今年度いっぱいで補助金を終了して、はたして「低炭素社会づくり行動計画」の目標達成の見通しはあるのでしょうか?
太陽光発電の累積導入量は、エネルギー白書によると、2008年度が214.4万kw、2011年度が491.4万kw、このうち約8割が住宅用です。太陽光発電の導入量は3年間で約2.3倍です。全量固定価格買取制度が2012年に導入され、メガソーラーなど非住宅用の伸びが期待されますが、果たして「2020年に10倍、2030年に40倍」という目標達成の見通しはあるのでしょうか。
太陽光発電システムの平均価格は、公表されている直近のデータ(2013年7-9月)によれば、既築設置の場合で43.2万円/kwです。補助金創設当初の2009年1-3月には62.4万円/kwでしたから、5年間で約30%ほど価格が低下したことになります。目標の「半額程度に低減」というのは程遠い状況です。
※ 平均システム価格は、補助金を交付している「太陽光発電普及拡大センター」の統計資料より。
このように、太陽光発電導入量も、システム価格の低減も、まだまだです。にもかかわらず補助金を終了するのは、あとは “市場まかせ” ということでしょうか。
補助金延長の見通しは?
経済産業省は、2014年度概算要求にこの補助金を盛り込んでいないようですし、これに代わる補助金も要求していないようです。
ですから、住宅用太陽光発電の補助金が延長されるかどうかは、通常国会の審議次第ですが、エネルギー基本計画案(年明けの1月に閣議決定の見通し)に原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置づける自民党・安倍内閣の下では、補助金の延長は望み薄でしょう。
また、民主党も、菅内閣時代の2011年7月7日、参院予算委員会で当時の海江田・経済産業大臣が、自らの政権が行った事業仕分けの結果を受けて、「将来的にはこれは全量固定価格買取り制度へと支援策を集中すべきだという指摘があったので、これを受け、平成25年度をめどに終了する方向で検討をしている」と答弁しています。こちらも期待できませんね。
なので、現状、国会の数の上では、補助金の延長は難しいと言わざるを得ません。補助金打ち切りになる前に、早めに太陽光発電を導入するのがよさそうです。
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