揚水発電を余剰再生エネ対策として有効利用すれば受け入れ量拡大

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揚水発電を余剰再生エネ対策として有効利用すれば受け入れ量拡大

(2014年11月2日)

2013年度の揚水発電の利用率が3%にとどまっていることが、経済産業省の調査で分かりました(徳島新聞11月2日)。2010~2012年度も3%台で、欧米の10%台と比べて低い利用率にとどまっています。

 

太陽光や風力など変動電源のバックアップ電源として、揚水発電の活用が急がれます。

 

日本の揚水発電は、もともと原発とセットで開発されてきました。原子力発電は、いったん運転を開始すると停止させることができないので、発電量を調整することができません。そのため、夜間など余剰になる電力を利用するため揚水発電が建設されてきました。

 

夜間の電気料金が安く設定されているのは、そもそも夜間に供給過剰になる原子力発電の電力を使わせるねらいがあったのですね。

 

揚水発電は、それ自体が巨大な蓄電池

揚水発電は、夜間の余剰電力を使い、下池(下部の貯水池)から上池(上部の貯水池)へ水を汲み上げ、必要なときに水を落下させ発電します。いわば、それ自体が巨大な蓄電施設です。

 

揚水発電所は、日本全国で40か所以上あり、設備容量は2,600万kwを超えます。世界最大規模とされています。

 

揚水発電は、従来、原発と一体で利用されてきましたから、夜間に余剰電力を使って水を汲み上げ、昼間に水を流して発電する運用方法がとられてきました。

 

この揚水発電を逆に利用すれば、つまり、昼間に太陽光で発電した余剰電力を、水を汲み上げるのに活用すれば、電気の需給調整に役立てることが可能です。

 

やっと動いた経産省

そもそも、再生可能エネルギーの導入拡大にあたり、経済産業省では、固定価格買取制度がスタートする前に、太陽光や風力の出力変動を吸収する役割を果たすバックアップ電源として、揚水発電の役割が議論されていました。

 

【参考】 総合資源エネルギー調査会・基本問題委員会(2012年5月21日)

 

再生可能エネルギーの余剰電力を用いて水を上の調整池に汲み上げ、他のピーク時の供給能力不足に備えるなど、再生エネ余剰電力対策として揚水発電を活用することの必要性が、当時から指摘されています。

 

それにもかかわらず経済産業省は、今まで揚水発電の活用策の検討を放置してきたのです。むしろ原発を再稼働させるねらいがあるため、揚水発電は利用したくないというのが本音かもしれません。

 

電力5社が再エネ受け入れを中断する事態になって、やっと揚水発電の活用に動きました。経済産業省は、揚水発電を最大限活用すれば再生エネの受け入れ可能量が増えるのではないかとして、再エネ受け入れを中断している電力5社に試算の提出を求めました。

 

経済産業省と電力会社の今後の動きを注視していきましょう。

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