電力5社の再エネ受け入れ中断を受け、再エネ買取制度抜本見直しへ
(2014年10月16日)
電力5社が相次いで再エネ電力の新規買い取りを中断したことを受け、経済産業省は再エネ固定価格買取制度の抜本見直しに入りました。
固定価格買取制度の創設(2012年7月)から2年余り。早くも岐路を迎えています。制度の問題点も確かにありますが、背景には、原発を再稼働させたい電力会社の思惑と、その意向を受けた自民党政権のエネルギー政策に大きな問題がありそうです。
新エネルギー小委員会で提起された論点・検討課題
10月15日に開かれた新エネルギー小委員会で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に関して、経済産業省があげた主な検討課題は次のようなものです。
再エネ固定価格買取制度に関する主な検討課題
- 太陽光発電に偏った現状を改めるため、住宅用以外の大規模な太陽光発電の新たな設備認定を停止。
- 太陽光の発電量が一定水準を超えたら、買取価格を自動的に引き下げる仕組みづくり。
- 価格の安い事業者を優先して買い取る「入札制度」の導入。
- 買取価格の決定を設備認定時から稼働時点の価格とする。
- 国民負担(再エネ賦課金)に上限を設ける。
当面の焦点
当面の焦点は、電力5社が新規受け入れを中断していることから、電力会社の再エネ受け入れ量をどうやって増やすかということになりそうです。
緊急の検討課題として、供給過剰の電力を他の電力管内へ送る仕組みの導入や、既存事業者の発電量を抑え、新規受け入れの余地を確保する案などがあげられていますが、ルールの整備には時間がかかり、既存事業者の利益を損なうことなどから、簡単ではなさそうです。
また、年度内をメドに判断する検討課題として、大規模太陽光発電設備の新たな認定を中断することなどがあげられています。これに対しては、発電事業者や太陽電池メーカー、地方自治体が危機感を募らせています。
- オリックスは、今後5年で約3,000億円を投じる計画で、このうち2,200億円が太陽光発電向け。「見直さざるを得ない局面が来る」とし、今後は政府が後押しする見通しの地熱発電やバイオマス発電の開発に注力する方針。
- 中国系太陽電池大手のサンテックパワージャパンは、2,600億円程度の大型投資を予定。新規開発には限界があると判断し、完成した発電所の買収などを検討。
- 太陽電池国内シェア首位(2013年)のシャープは、住宅向けからメガソーラー向けに軸足を移していただけに収益悪化は避けられず、今後の対応を検討中。
(日経10月16日付より)
地方自治体では、エネルギー需要の全量を再エネで賄う(福島県)、家庭用エネルギーの多くを太陽光など再エネで賄う(熊本県)といった目標を掲げているところもあります。太陽光発電設備の新たな認定中断は、地方の産業振興策にも深刻な影響を及ぼしそうです。
再エネ導入目標をなくす?
経済産業省は、再生可能エネルギーの導入目標について、再エネ比率21%を投げ捨て、長期的に再エネ比率を増やせばよいとする「論点」を示しました。
- 費用対効果の観点から、再エネ比率21%を目指して強力に政策を推し進めていく必要性がどこまであるのか。
- これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準(電源構成比の21%)を上限とするのではなく、長期的に再エネ比率を増加していくべき。
(10月15日、新エネルギー小委員会配布資料より抜粋)
4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では「これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の再生可能エネルギーの導入を目指す」としました。その「水準」というのは、電源構成比の21%です。閣議決定の中では数値目標は明記されませんでした。
そして今回の「論点」提起です。再生可能エネルギーの導入目標を、なし崩し的になくしてしまおうとする政府の姿勢が透けて見えます。
この2年間で再生可能エネルギーが普及したとはいえ、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、まだ2.2%(水力を除く)にすぎません。再エネ先進国とされるドイツの1割程度にすぎません。世界的に日本は大きく後れをとっています。導入目標を投げ捨て、成行きに任せていいのでしょうか。
ドイツ | スペイン | イギリス | アメリカ | フランス | 日本 | |
---|---|---|---|---|---|---|
水力 | 3.2% |
13.1% |
1.3% |
6.4% |
12.5% |
8.5% |
再エネ (水力除く) |
20.9% |
26.4% |
13.6% |
6.2% |
4.7% |
2.2% |
※ 2013年の数値。日本は2013年度。資源エネルギー庁の資料より。
日本の2013年度の発電電力量は、水力8.5%、水力を除く再生可能エネルギーが2.2%で、合計では10.7%です。これを2030年に21%にまで持っていく目標です。
なお、経済産業省は、2014年6月末時点の認定済みの案件が全て稼働すれば19.8%になるとしています。しかし、認定を受けた後で事業を断念したり、認定取り消しになった案件もあります。
経済産業省は、400kw以上の太陽光発電設備について、認定を受けながら稼働していない案件について順次調査を行っています。2012年度に認定を受けたもののうち9.7%が設置場所も設備も決まっておらず、認定を取り消されています(2014年8月現在)。今後さらに増える見通しです。
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