再生エネ買取契約 早期に発電開始可能な事業者を優先
(2014年11月6日)
経済産業省は、11月5日の新エネルギー小委員会で、電力会社と接続する権利を持っていながら一定期間過ぎても発電を開始しない事業者の接続権利を失効させ、後発であっても早期に発電開始を見込める事業者を優先して接続させる方針を示しました。
接続枠を確保していても発電開始が遅れれば接続権利を失効
電力会社の系統に接続する権利(接続枠)を確保していながら、発電を開始しないケースが少なくありません。そのため、後発の事業者が接続枠を確保することができず、新規参入の妨げになっています。
なぜ発電を開始しない?
設備認定を受けながら事業開始が見込めない理由としては、
- 発電設備の仕様変更が相次ぎ、具体的に事業が進まない
- 農地転用など土地利用関係法令の許認可が得られない
- 金融機関からの融資が不調
というようなケースが多いようです。より高い買取価格を確定しておこうと設備認定と接続申請だけを急いで、事業計画を詰められていない事業者が多いことが背景にあります。もちろん意図的に、太陽光パネルなど資材価格の値下がりを待っているような事業者もいます。
新規参入の妨げに
9月末に電力5社が新規接続の保留を発表したことにみられるように、再生エネ電力が過剰になると安定した電力供給ができなくなる恐れがあることから、電力会社側は接続に慎重になります。
これまでも現実に、接続申請しても電力会社の回答に数か月間もかかり、事実上の保留となるケースがあるようです。新規参入が困難な状況が生まれています。
経済産業省が接続ルールの見直しを開始
経済産業省は、後発であっても事業熟度の高い事業者が優先して系統接続が可能となるよう運用を改善する方針を示しました。
そのために、接続枠を確保しながら発電を開始しない事業者を排除する具体的な対応策を新エネルギー小委員会に示し、検討に入りました。
例えば次のような対応策が示されています。
接続契約前における対応策
電力会社が事業者からの接続申請を受理し、「連携承諾」すれば、「接続契約」へと進みます。現在は、電力会社が接続申請を受理した時点で買取価格が決まります。ところが接続申請だけして、なかなか契約締結をしない事業者がいます。
この場合、「連系承諾」により「接続契約(本契約)」の「予約契約」が成立していると考えられるので、一定期間が経過しても契約締結がなされない場合、「接続契約の予約」を失効させるという対応をとるというものです。
接続契約後における対応策
接続契約後については、
- 系統接続のための工事費負担金を支払わない場合には、再エネ特措法上の接続拒否事由に該当するとして対応。
- 運転を開始しない場合には、接続契約上の解除条項にもとづき対応。
といったような方法が示されています。
これらは接続ルールの論点として新エネルギー小委員会に示されたもので、確定されたものではありません。接続ルールの見直しは始まったばかりです。
しかし、こういった方向で、新規受け入れ枠を拡大することも検討されています。事業計画がしっかり詰められていれば、新規参入に道が開けそうです。
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