検討課題の方向が絞り込まれる
(2014年12月3日)
12月2日に総合資源エネルギー調査会の新エネルギー小委員会が開かれました。固定価格買取制度の検討課題の方向が絞り込まれてきました。おもなポイントをご紹介します。
地熱や中小水力など安定して発電できる再生エネを優先して買い取る方向がすでに示されていますが、それに加え、住宅用太陽光も優先して買い取るよう電力会社に要請する方針を経済産業省が示しました。
新エネルギー小委員会に提出された資料には、「個人を含めた需要家に近接したところで中小規模の発電を行うことも可能で、小型・分散電源の場合は、系統負担も抑えられる上に、非常用電源としても利用可能である」と、その理由が示されています。
住宅用太陽光発電は、電力を利用する家庭で発電するため、送電網への負荷が小さく、災害時などに非常用電源として使える利点があることから、引き続き普及を進める考えです。
現在、電力会社に接続を申し込んだ時点の買取価格が適用されますが、接続契約成立時の価格を適用する方針です。
事業計画立案から発電開始までの流れは、
国の設備認定 ⇒ 接続申込み ⇒ 接続契約 ⇒ 運転開始・接続
現行制度では、接続申込み時の買取価格が適用されますが、それを後ろにずらして、接続契約時の買取価格に変更します。より実際のコスト構造に近づけるためです。
買取価格の適用時期は、実際のコスト構造が確定している運転開始時が理想的です。新エネルギー小委員会で「資金調達への制約の大きさから現行制度では採用には慎重であるべき」とする意見があり、運転開始時とする案については、今後の検討課題とされました。
なお、接続契約時にすると、電力会社の検討が長期化する場合など、電力会社側の事情によって、通常の処理期間で契約締結できない可能性もあります。
そのため、接続申し込み以降の「一定期間」を設け、接続契約の締結時点を買取価格の決定時点とすることを原則としつつ、電力会社の事情によって「一定期間」を超過する場合には、「一定期間」終了後の買取価格を適用することが検討されています。
高圧接続の場合、現状では、接続検討に2~3ヵ月、その後契約締結まで6ヵ月かかっていることから、「一定期間」については、接続検討を含めて9か月とする方向です。
買取価格の決定後に設備の出力や基本的な仕様が変更された場合には、買取価格も変更されます。変更時点での買取価格が適用されます。
買取価格を変更する発電設備の仕様変更について、経済産業省は次のような内容を示しています。
出力の変更
出力の変更。ただし、20%未満または10kw未満の出力減少は除外。
現行ルールでは、大幅な出力変更(20%以上かつ10kw以上の増減)の場合、買取価格が変更になります。それ以外は「軽微変更」として、買取価格の変更はありません。
今後、出力が変更になると、原則、買取価格も変更となります。例外的に「一定範囲の出力減少」(20%未満または10kw未満)は除外する方向です。これは、希少生物の生息や文化財の埋蔵等が確認され、使用できる土地面積が減少する場合など、発電事業者の責に帰さないケースがあり得るからです。
太陽電池の基本仕様の変更
太陽電池の基本仕様(メーカー、種類、変換効率)の変更。ただし、メーカーの倒産等によるやむを得ない変更、変換効率を向上させる変更は除外。
現行ルールでは、太陽光パネルのメーカー・種類・変換効率などは「軽微変更」に該当し、買取価格の変更はありません。
これまで設備の仕様変更のうち、7割以上が太陽電池の基本仕様の変更をともなうものとなっていることから、太陽電池の基本仕様の変更を対象としています。
なお、出力の変更がない変換効率の向上は除外されます。それに制約をかけると、メーカーの技術革新が阻害される恐れがあるという理由です。
現行は、連系承諾の時点で接続枠を確保できる仕組みです。これを「後ろ倒し」して、接続契約の締結時点にする方針です。接続契約後、1カ月以内に工事費負担金を支払わない場合は、契約の解除(接続枠の解除)となります。
また、接続契約の締結に際し、工事費負担金の支払い期限に合意しない発電事業者に対して接続拒否ができるよう、経済産業省はルールを改める方針です。「正当な接続拒否事由」に「接続契約の締結後、相当期間内に接続に要する費用を支払うことに同意しないこと」を追加する方向です。
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