固定価格買取制度の運用見直し
(2014年2月19日)
固定価格買取制度で設備の建設認定を受けながら、発電施設を建設する用地も太陽光パネルなどの資材も準備していない悪質業者が増えているようです。
太陽光で発電した電力の買取価格は、10kw以上の発電設備の場合、20年間固定価格で電力会社が買い取ります。現在(2013年度)は1kwhあたり37.8円(税込)です。
買取価格は、太陽光パネルなど太陽光発電設備の価格低下にともない、毎年下げられます。一方、買取価格は、発電開始時点でなく、認定時のものが適用されます。そうしたことから、買取価格の高いうちに認定だけ受けておいて、太陽光パネルの価格がもっと下がってから建設し、利益をあげようとする事業者がいるようです。
資源エネルギー庁が今年1月10日に公表した「再生可能エネルギー発電設備の導入状況」(2013年10月末時点)によると、固定価格買取制度導入後、大型(10kw以上)太陽光発電は、建設の認定を受けた施設が2,249万kwですが、実際に発電を開始したのは382.7万kwで、わずか17%です。
買取費用は、電気料金に上乗せされ、利用者が負担する仕組みです。再生可能エネルギー・自然エネルギーを普及・促進させるための制度だから、利用者も徴収に応じているのです。それを自社の利益のために悪用するなどとんでもありません。制度の信頼性を揺るがす問題です。
経済産業省が悪質業者追放へ動く
経済産業省も、そうしたことから悪質な業者の処分、固定価格買取制度の運用見直しに踏み切ったようです。
資源エネルギー庁が2月14日、「太陽光発電設備に関する報告徴収の結果」をまとめ、公表しました。
2012年度中に認定を受けた40kw以上の太陽光発電設備(4,699件・1,332万kw)について業者から報告を求めたものです。調査対象は、件数ベースで14%、出力ベースで23%となります。
その結果によると、
- 場所・設備ともに未決定のものが、672件(14%)、303万kw(23%)
- 場所または設備のいずれかが未決定のものは、971件(21%)、435万kw(32%)
となっています。両方を合わせると、調査対象の400kw以上の太陽光発電設備のうち、件数で35%、発電能力で55%にも上るものが「問題あり」なのです。
件数よりも発電能力の方がパーセンテージが高いということは、それだけ大規模な設備の方が問題が多いということですね。
経済産業省は今後、この報告に基づき、聞き取り調査を開始します。場所・設備とも未決定のものは3月末をめどに、場所または設備のいずれかが未決定のものは8月末までに聞き取り調査を行い、その上で場所・設備とも未決定と認められたものは認定を取り消す方向です。
固定価格買取制度の運用見直し検討開始
今後(2014年度)の設備認定については、有識者の作業部会「新エネルギー小委員会買取制度運用ワーキンググループ」を設置し、運用のあり方について検討されます。認定後の一定期間内に用地と設備の確保を義務付けるなどの対策を検討し、3月末までに見直し案をまとめる方向です。
また、作業部会の中で、電気料金に上乗せして徴収される「再エネ賦課金」についても、高く見積もられているという指摘もあったようです。
業者に甘い経済産業省
「認定基準」は、もともと経済産業省令で定められています。
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則」(2012年6月18日経済産業省令第46号)では、第8条(認定基準)に次のように明記されています。
「当該認定の申請に係る再生可能エネルギー発電設備を設置する場所及び当該設備の仕様が決定していること」
つまり、経済産業省自身が、法令に則った運用をしていなかったということなのです。経済産業省は、いまになってあわてていますが、国自身が業者の悪行を容認していたことにほかなりません。
しかも今後の運用についても、「認定後の一定期間に用地と設備の確保を義務付ける」方向のようですが、「施行規則」では「認定前の確保」を義務付けています。矛盾します。法令は柔軟な運用が必要な場合もありますが、今回の場合、果たしてそれでいいのでしょうか。それとも、「施行規則」を改正するつもりなのでしょうか。
いずれにしても、経済産業省は業者に甘いと言わざるを得ません。
原子力発電などに頼らない自然エネルギーの普及は大いに歓迎です。そのために一定の負担もやぶさかではありません。しかし、制度構築はしっかりしてもらいたいものです。
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