九州電力が年内にも地熱・水力発電受け入れ再開
(2014年10月17日)
9月25日から再生可能エネルギーの新規受け入れを停止している九州電力が、地熱発電と水力発電の受け入れを再開する検討に入ったようです(日経10月17日)。
年内にも地熱と水力に限り再開の方向です。九州電力のほか、電力4社(北海道・東北・四国・沖縄)も10月1日より再エネの受け入れを停止しています。九州電力の転換は、ほかの電力会社の判断にも影響しそうです。
電力5社の突然の受け入れ停止には批判が強く、経済産業省の審議会でも問題になっています。現在、経済産業省の有識者による作業チーム(系統ワーキンググループ)が、各電力会社の接続可能容量を検証し、拡大する方策を検討中です。年内にも取りまとめが行われ、方針が示される予定です。
地熱・水力は受け入れても影響が小さいと判断
九州電力には、今年(2014年)3月の1ヵ月間で、それまでの1年分の申込み量に相当する太陽光の接続契約申込みが集中しました。2014年度からの買取価格の引き下げ(1kwあたり税抜で36円から32円へ)と認定実務の運用の厳格化により、年度末の駆け込みが相当量あったようです。
それらの全てが発電すると、電力使用量の少ない時期に、昼間の消費電力を太陽光・風力による発電電力が上回り、電力の需要と供給のバランスが崩れ、電力を安定して届けられなくなることが懸念されました。
そうしたことから、九州電力では、昼間の揚水運転の実施や地域間連系線を活用した九州外への送電など、現状で可能な最大限の需給バランスの改善策により、再エネをどこまで受け入れることができるかを見極める検討を行うとして、数か月、接続申込に対する回答を保留するとしていました。
再生可能エネルギーの中でも発電量の変動が大きい太陽光に比べて、地熱や水力は受け入れを再開しても影響は小さいと判断したようです。
現在、九州電力は、国が買取認定した地熱発電所32か所のうち19か所、水力発電所は28か所のうち14か所の接続を保留しています。
再エネ「一律接続停止」への強い批判
電力会社が再生可能エネルギー全てを一律に接続停止にしたことに対しては、発電事業者から強い批判がありました。
15日に開かれた経済産業省の新エネルギー小委員会でも、
- 「再エネの特性から、一律に接続を見合わせるというのは乱暴であり、各再エネの個性を考えて対応できないか」
- 「地熱発電・中小水力発電は、系統運用上の取扱いも容易であることに加え、地域の活性化に寄与することから、太陽光や風力とは異なる取扱いをするべきでないか」
といった意見が出されました。
また、太陽光発電に偏った現状を改善させたいとする国の思惑もあるでしょう。
そういったことから、九州電力は、地熱と水力に限り受け入れ再開の検討を始めたのではないでしょうか。
経済産業省が地熱や水力の受け入れ再開を後押し
九州の再生可能エネルギー構成比(発電容量ベース・2014年6月末現在)
発電設備 | 運転開始 | 認定設備容量 | |||
---|---|---|---|---|---|
買取制度前の 累積導入量 |
買取制度後の 導入量 |
累積導入量 | 構成比 | 対全国 | |
太陽光 |
27.9% |
99.6% |
59.4% |
97.4% |
26.0% |
風力 |
14.0% |
0.0% |
7.8% |
0.2% |
3.8% |
中小水力 |
34.1% |
0.03% |
19.1% |
0.4% |
21.0% |
地熱 |
7.1% |
0.008% |
4.0% |
0.1% |
96.3% |
バイオマス |
16.9% |
0.4% |
9.6% |
2.0% |
28.2% |
※ 買取制度前:固定価格買取制度の導入前(2012年6月末まで)
※ 買取制度後:固定価格買取制度の導入後(2012年7月~2014年6月末まで)
※ 九州経済産業局が2014年10月15日の新エネルギー小委員会に提出した資料より。
九州電力管内には、全国の地熱発電の96%が集中し、中小水力も21%です。一方、九州電力管内の認定設備容量の構成比では、太陽光が97.4%に対して、地熱と中小水力を合わせても0.5%です。
経済産業省は、太陽光に偏った再生可能エネルギーを見直すため、九州電力が地熱や水力の新規受け入れを再開する方針を後押しする考えです。
また、現在受け入れを停止している北海道、東北、四国、沖縄の各電力会社にも、接続可能容量を検証した上で、地熱や水力の受け入れを再開するよう求める方針です。
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