固定価格買取制度の見直しスタート
(2014年6月14日)
2014年6月13日、経済産業省が、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の見直しに着手することを明らかにしました。
固定価格買取制度の根拠となっている再エネ特措法(FIT法)では、「エネルギー基本計画が変更されるごと」または「少なくとも3年ごと」の見直しが定められています。2012年7月の制度スタートから今年度が3年目であり、4月に新しいエネルギー基本計画が閣議決定されたことから、見直しが始まりました。
「エネルギー基本計画」具体化の一環
経済産業省は、「エネルギー基本計画」(2014年4月11日閣議決定)を具体化するため、省エネルギー、新エネルギー、原子力などの各分野について、総合資源エネルギー調査会の中の小委員会で議論を進めていくとしています。
今後の固定価格買取制度のあり方については、新エネルギー小委員会の中で検討されます。
「エネルギー基本計画」は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けて、今後も原発を使い続けることを宣言しました。「規制基準」に適合した原発の再稼働を進めることも明記されています。原発の新増設にも含みを持たせています。
一方、再生可能エネルギーについては、「現時点では安定供給面、コスト面で様々な課題が存在するが、…有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源」という位置づけです。また、「導入加速」とは書かれていますが、「これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を目指し」としているだけで、数値目標も示していません。
「これまで示した水準」というのは、次のものです。閣議決定の本文でなく脚注に添えられているだけで、それも4~5年前のものです。
- 2009年8月、「長期エネルギー需給見通し(再計算)」で示された、「2020年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は13.5%」。
- 2010年6月、総合資源エネルギー調査会総合部会・基本計画委員会合同会合資料「2030年のエネルギー需給の姿」で示された、「2030年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は約2割」。
福島原発事故後、国民の多くが原発依存でなく、再生可能エネルギに軸足を移すように求めているにもかかわらず、あくまで原発にしがみつき、再生可能エネルギーについては原発事故の前の目標を基本的に踏襲しようというのですから、議論の方向はある程度見えてきます。
「エネルギー基本計画」で固定価格買取制度はどのように扱われているか
固定価格買取制度については、「エネルギー基本計画」の中で次のように書かれています。
再生可能エネルギー源の最大の利用の促進と国民負担の抑制を、最適な形で両立させるような施策の組合せを構築することを軸として、法律に基づき、エネルギー基本計画改定に伴い総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じる。
固定価格買取制度は、再生可能エネルギーの普及促進のために設けられた制度です。しかし、買取費用を電気料金に上乗せする仕組みなので、再生可能エネルギの普及が進めば進むほど、国民の負担が重くなる矛盾があります。
そのため、負担の抑制と導入加速を両立させる具体策の検討が必要です。また、法律で制度発足後3年間に限り買取価格を高めに設定することが定められています。
閣議決定にある「法律に基づき、エネルギー基本計画改定に伴い総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じる」というのは、買取価格の大幅な低下を考えているのではないかと思われます。
太陽光発電の設置をお考えなら、早めがいいかもしれませんね。
今後、固定価格買取制度がどうなっていくのか、国の動向を追っていきたいと思います。
再生可能エネルギーの導入を促進するため、太陽光や風力など自然エネルギーで発電した電気の全量を、国が定めた価格で、一定期間、固定価格で大手電力会社に買い取るよう義務付けた制度。電力会社が買い取るための費用は、月々の電気料金に上乗せされます。
一般的な家庭で設置している10kw未満の住宅用太陽光発電の場合は、家庭で使用して余った電力のみ買い取りますが、それ以外は発電した全量が買い取り対象になります。買取期間は、10kw未満の住宅用太陽光発電が10年間、それ以外の発電は20年間です。発電システムを設置・稼働させた年の買取価格で、10年間または20年間買い取りを行います。
買取価格は毎年見直しが行われ、年々低下する傾向にあります。現在の買取価格は、太陽光発電の場合、10kw未満が37円(税込)/kwh、10kw以上が32円(税抜)/kwhです。
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